モノづくり王国物語


第八章 動乱≠フ大正期 (1)

一、伸びる商工業

 

前回取り上げた松坂屋の小史によって、この物語も明治から大正十二年(一九二三)の関東大震災まで一挙に話が飛んでしまった。この間、明治時代に創業した中部地方の老舗企業を調べてみると、別項のように日清戦争後の賠償景気≠竅A日露戦争後の一時的な大陸進出景気≠フ前後が大半を占め、その数の多さにも驚く。

これらの企業は規模の大小を問わず、いずれも現在の「モノづくり王国」の力強い(いしずえ)になっていることは間違いなく、今後ますますの躍進が期待される。

ことに明治三十九年は、大々的に近代化が進められた明治期を通じてみても、わが国の企業勃興の最盛期であった。造船、ガス、電気、機械、セメント、精糖、肥料、ビール等々の新興産業が各地に興る。

日清戦後の企業発達期には、鉄道、銀行、紡績の三部門が中心だったが、日露戦争後の産業の発展は、実に多彩で目を見張らせるものがある。中部地方でも多くの企業がこのころ事業の基盤を築いた。

そして明治時代に芽を吹いた、わが国の資本主義経済は、大正三年から同七年十一月までつづいた第一次世界大戦を契機にして、さらに重化学工業化を進め、工業生産額も飛躍的に伸びた。

中部地方においても、繊維、陶磁器産業がめざましく発展したのをはじめ航空機関連産業、鉄鋼、造船、合板などの新しい産業がぞくぞくと誕生したのである。

そのころの創業A ▽@小笠原製粉A明治四十年B製造業C小笠原良治D碧南市 @オリムパス製絲A明治四十一年B製造業C小山内憲太郎D名古屋市 ▽尾張製粉A明治十八年B製造業C榊原卓三D半田市 ▽@カゴメA明治三十二年B製造業C西秀訓D名古屋市 ▽@片岡毛織A明治三十一年B製造業C片岡裕司D津島市 @共栄社A明治四十三年B製造業C林雅巳D豊川市 @笹徳印刷A明治二十三年B製造業C杉山卓繁D豊明市 @大日本アガA明治四十五年B製造業C鋤柄喜彦D名古屋市

@高橋高音堂A明治四十四年B製造業C高橋太一D名古屋市 @鶴弥A明治二十年B製造業C鶴見哲D半田市 @東郷製作所A明治十四年B製造業C相羽繁生D愛知県東郷町



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